ADRへの途?〜裁判観日独米比較

今日からドイツ法は「公法と私法」。ドイツ行政法きたー!(笑)
結局Otto Mayerまではたどり着きませんでしたが、今日も先生とお話してきました。*1
というのも、昨年の行政法のゼミで恩師*2から聞いていたことと、今日のドイツ法の授業の内容が一見矛盾するように思えたから。
「客観性を重視して行政へのコントロールを重視するのに、どうして客観訴訟の採用には厳しいんだろう?」
この質問への回答自体はちょっとややこしく私自身も納得しかねていますので、こちらは書きませんが、ちょっとしたきっかけで話は発展していくものです。
なお、ノートもとらずにおしゃべりしてたので、微妙に間違ってるかもしれません。そのときの責任は私にあるんで、先生とは無関係です。

K「そういやドイツは出訴期間めちゃ短いんですよね。」
センセ「うん、「侵害を受けた人はすぐに訴えるのが義務*3」みたいに捉えているからね」
K「えええ。たしかに行政法の先生にもそう言ってた気がしますけど・・・」
センセ「別に行政裁判に限ったことではなくて、ドイツ人は揉め事がおきたらすぐに裁判に行くから。交渉のための行為規範を裁判所に出してもらいに行くんだよ」

・・・へ〜。なんかアメリカみたい?
うん、これはいい機会だからADRについても聞いてみよう。
ここで、アメリカコモンローの世界で、「揉め事おきたらADRにし、裁判には訴えません」という約款が広まっているせいで判例が蓄積されずに困る、という議論がある*4 ことをつたえると

センセ「アメリカのADRって、裁判外とはいえ裁判と同じ手法でやるんだよね?日本でやろうとしていることって、そうじゃないよね。それに、日本で裁判っていうと最終手段だし」
どうやら、話を聞いてると、ドイツの話が出てこない。
K「ドイツはすぐに行為規範求めに訴えちゃうから、そもそもADRにならないんですか?」
センセ「そう・・・だね。あまりADRって話は聞かないなあ」

つまり、話を聞きながら英米法の授業も踏まえてまとめると、こういうことなんですかね。
ドイツ:紛争がおきてすぐに裁判所に「交渉の際によるべき行為規範」を求めに訴える
アメリカ:紛争がおきて(すぐかどうかは事案にもよるかもだが)、交渉のためにDiscloserを使って情報開示を求めたい(という点も視野にいれて)訴える
日本:紛争がおきたら、なんとか交渉でまとめたい。裁判なんて最後の手段


すると、ADRの位置づけ、可能性も異なっていて
ドイツ:そもそもADRがはやらない
アメリカ:国家の提供する紛争解決機関としての裁判所と、民間の提供する紛争解決機関としてのADRが競合するサービス提供をする。ときに契約で「排他的管轄」*5をつくることもある
日本:裁判という最終手段には訴えたくないが、自分たちでは埒があかないときに利用する便利な手段?
ということになるんでしょうか。


でも、アメリカにおける「ADRに排他的管轄を与える条項」って、たしかに訴える権利って自分で処分可能だけど、約款での場合、多くの企業が皆この条項をいれていて他のを利用できない場合は憲法違反にならないんでしょうか。裁判をうける権利の不当な侵害にならないの?
センセ曰く「ドイツだったら違憲の疑いがあるかも」だそうな。


あ、明日の1限の英米法ってADRやるんだっけ?は、早く寝なきゃ!(汗)

*1:昨日は民法で。ちなみに、ドイツ法の先生とは3回に2回はこういう話をしている。別に遅刻魔の先生からお昼休みを搾り取ってやろうという悪意はない。念のため

*2:彼のドイツ公法についての理解を踏まえた論文は有名で、ゼミでもたびたびドイツ、ときにフランスとの比較が行われていた

*3:なぜ義務なのかといえば、公正な行政が行われるようにコントロールするには、侵害された人が訴えるのが一番だ、と考えているから。そのため、出訴には権利侵害が要求される

*4:kikiさんのブログに書いた私のコメントも参照してください http://blog.livedoor.jp/galaxykiki/archives/27539417.html#comments

*5:これは私があてた言葉。だって、ADRにしか訴えない、ってことはそういうことじゃない?