公法系「実務」時代の到来?

各所で話題の、とりわけ弁護士の方々のブログで話題になっているニュース、乗り遅れないうちに。

国の訴訟体制強化へ、相次ぐ敗訴で専門スタッフ増員
 政府は2007年度から、国が被告となる裁判に対応する体制の強化に乗り出す。

 今年に入って、薬害C型肝炎原爆症認定訴訟など、国の政策判断などが問われる裁判で、国の敗訴が相次いでいるためだ。

 裁判に臨むスタッフの質量不足も敗訴増加の一因と見て、法務省の専門職員増加、外部の人材活用などに積極的に取り組む考えだ。

 国が被告となる裁判は、法務省が一元的に対応している。検事や裁判官出身の訟務検事などが、国側代理人として訴訟活動をしている。国を訴える裁判は近年増える傾向にあり、04年は8424件に上った。

 薬害などの集団訴訟では、原告弁護団が100人規模になることもある。しかし、法務省訟務部門の訟務検事などの法曹資格者は50人前後で、一つの裁判に数人しか担当者をつけられないのが現状だ。民間弁護士に弁護を依頼する場合もあるが、報酬額が低いために依頼できないケースもあるという。

 このため、法務省では、〈1〉訟務部門で重大裁判を統括している参事官(法曹資格者)を3人から5人体制とする〈2〉約340人いる法務専門職員も10人程度増やす〈3〉民間弁護士に訴訟弁護を依頼する場合に支払っている報酬予算額を倍増させる――などの対策を進める意向だ。他省庁との人事交流を拡大することや、民間弁護士を期限付きで国家公務員に登用することも検討している。

 さらに、大学教授などから準備書面作成などの支援を受けるため、「アドバイザー雇用」「調査研究委託」などの制度も創設したいとしている。

(2006年8月27日3時0分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060827it01.htmより、全文引用。


どうやら弁護士の方々からは批判的に捉えられているこのニュースですが、実際に訟務検事を長く経験されたtamago先生が、賛成論を唱えていらっしゃいます。

http://tamago3.blog21.fc2.com/blog-entry-346.html
http://tamago3.blog21.fc2.com/blog-entry-347.html

こちらのエントリ、実際の訟務検事のお仕事がよくわかる内容で、大変ためになりました。10人いないと各担当者で対応できない、というのは、スケールの大きな紛争ではやむを得ないでしょう。(法曹資格者10人、という意味ではない。念のため。)


さて、多くの先生が批判していらっしゃるとおり、何も原告弁護人が100人いたからって100人フルで働いているわけじゃないだろうから、この点を捉えて考えるのは行き過ぎ。とはいえ、tamago先生のエントリから透けて見えるのは、3年の期限で検察に戻ったり裁判官に戻ったり弁護士に戻ったりする場合、「公法実務」とでもいうような、勝つために必要な議論を、民事的に、国のために行うというノウハウが蓄積されうるのかが問題になる、ということでしょうか。裁判官の仕事とも、検察官の仕事とも、そして弁護士の仕事とも微妙に距離があるような・・・*1
やはり、期限付き、ではどうにもならない面が出てくるんじゃないかと心配しています。
ここで行政法に長けた弁護士が出てくれば、ニッチなのかなあ。やってみたい、というか、理想の進路のひとつ。一番やりたい仕事かもしれない。でも、それだけじゃもちろん食べていけないだろうし、いつもいつも国側につくのはシャク、とはいえいつも原告側もなんだかなあ、と思うのですがどうでしょう。


もちろん、最後の行にも注目です。


・・・検察の説明会、行くべきだったかなあ・・・(今頃後悔してどうする)


とにかく、このような制度を利用して呼ばれるような専門家になるために勉強しないとね。テストは1週間後orz

追記:勉強しろよと言う声が飛ばないうちに一言。
こういう報道をする意図とか「負けたから増員」という理由付けに反発とかいろいろ突っ込みどころはあるニュースですが、その点については割愛。もちろん勝敗は証拠で決まるだろうし、人数増えても負けるものは負ける、というのは織り込み済み。その点、やっぱこの記事の書き方は問題があるよなあ。

*1:そして、行政訴訟・国家賠償訴訟に特有の問題点がある、というのはもちろんのこと。