もんじゅ「再」最高裁判決 速報
核燃料サイクル開発機構（核燃機構、旧動燃）の高速増殖炉「もんじゅ」（福井県敦賀市）を巡り、周辺住民３２人が国による原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟で、最高裁第１小法廷（泉徳治裁判長）は３０日、原発訴訟で初めて住民勝訴とした名古屋高裁金沢支部判決（０３年１月）を破棄し、住民側の請求を棄却した。判決は「安全審査に看過し難い過誤、欠落はなく、許可処分が違法とはいえない」と述べた。住民側の逆転敗訴が確定した。
判決は、設置許可前の安全審査のうち、２審が「看過し難い過誤、欠落」と認定した（１）ナトリウム漏れ事故対策（２）蒸気発生器伝熱管の破損事故対策（３）炉心崩壊事故対策――の３点について合理性を検討。三つのうち、実際に起きたナトリウム漏れ事故（９５年）後の解析データも踏まえて審理したが「安全審査は合理的だった」として、いずれも２審判断を覆した。
また、伊方原発訴訟最高裁判決（９２年１０月）が「安全審査は、基本設計の安全性にかかわる部分だけを対象とする」とした判例を踏まえ「どこまでを基本設計の範囲に含めるかも、国の合理的判断に委ねられている」と国に一定の裁量があるとの見解を明確にした。
２審は、安全審査に重大な違法があると判断し、施設の潜在的な危険性も重視して、行政処分を無効とするための要件とされた「重大」かつ「明白」な違法のうち「明白性は不要」と判断し議論を呼んだ。この点も争点だったが、最高裁は、安全審査の違法性自体を否定したためこの点に関する判断を示さなかった。
判決は５人の裁判官全員一致による判断。
（毎日新聞） - 5月30日23時53分更新
ついに出ましたね。やはり、というかなんというか、「重大明白」要件についての判断に入る前に違法性否定で切りましたか。高裁判決がやや性急だった*1ために、こういう判断になったんじゃないか、と危惧しているのは私だけ？
住民らは８５年９月に提訴。当初は原告適格が争われ、最高裁が９２年９月、住民側全員に原告適格を認め、審理を福井地裁に差し戻した。実質審理に入った差し戻し後の１審は請求を棄却したが、２審は「安全審査にミスがある以上、放射性物質が放出される具体的危険性を否定できず、重大な違法がある」として許可を無効と認めた。
もんじゅはナトリウム漏れ事故後、運転を停止したが、今年２月に福井県の了解を得て、改造工事の準備が進んでいる。諸外国が高速増殖炉から撤退し、日本でも実用化のめどが立たないうえ多額の経費を要することから、計画推進を疑問視する声も強いが、国は安全審査を妥当とした今回の司法判断を受け、予定通り３年後の運転再開を目指す。【木戸哲】
（同記事）
それにしても、原告適格から数えるともう20年も経ってしまったんですね。
私がよちよち歩きしてるくらいの時からやっているなんて。
「安全審査に看過し難い過誤、欠落はなく、許可処分が違法とはいえない」というお決まりのフレーズも、その判断の基準時がどこなのかがもうよくわからないくらい。
技術そのものも、その技術への国際的評価も移り変わっているし・・・。
改正行訴法9条2項の精神のもとになった「前」最高裁判決はよかったものの、結局本案審理に入るとこうですからね。入り口が多少広くなったって・・・。出口のほうはまだいじられていない。必ずしも裁量論反対、という立場をとるわけじゃない*2けれど、詳細な検討、という段階にはまだ至っていないとはいえるでしょう。この妥当性を問う研究はまだまだこれからの話*3。前提となりうる判例*4が蓄積していかないと、そもそも裁量論って議論が空中分解してしまう。検討の際に気をつけるべきなのは実体法（条例）規定がどうなっているかにもよるべきだし、専門性の有無の程度とか、事案のタイプごとにも異なるべきだろうし。
裁量審査の議論は、底が見えません。
某先生が授業で「この判決は見逃すな」と仰ったそうな。
行政法をはじめたばかりの人も、そうでない人にも、この事件の含む問題点は色んなレベルで考える素材になると思います。私も、はやいとこちゃんと
判決文*5そのものを一審とかからちゃんと比較してもう一度勉強しよう。
*1:たとえ違法性を認めるのでも明白要件不要とまで言っちゃってよかったのか？というのが私見を含め、大方の意見ではないでしょうか？
*2:とかくこの手の事件は後追いで判断して「事故が起きた以上はやっぱし安全審査にも問題があったのだろう」という議論になりがちだけど、それでいいのか、とか。
*3:先行する研究はもちろんたくさんあるけれど・・・
*4:もちろん、本案審理に入ったことがそもそもの条件になる
*5:http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/50a6d1d357a729f149257011002c82e1?OpenDocument
