消費者契約法4条構成と債務不履行構成の差?

ここ一週間くらい法学エントリがなくて、なんかだめだめな自分が浮き彫りなので・・・
バイトがなかったおかげで、いつも突っ込みいれたくなる消費者法の教授と20分くらい喋る時間があったので、それについてコメントしておくことにする。


皆さんに質問です。
「ハーバービューをホテルで堪能する香港の旅」と題されたツアーで、実際には全然港が見えない部屋に通されたら、どう文句つけます?
金カエセ!ですよね。そこまでは当然。
でも、どうカエセというかまで考えないといけません。
そこで思いつくのは

消費者契約法
第四条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

 一 重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

 二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

この、4条1条1号の不実告知じゃない?と思うわけです。すると、取り消して御破算にして、あとは不当利得で処理か。


そこで「いいや違います」というのが経済産業省の解釈。*1
これは債務不履行だから、消費者契約法の範疇じゃないそうな。「港の見える部屋を案内する」債務だ、というわけです。
そうなのか・・・そうなのか?

どっちにも転びそうな気がするのは私だけではないようで、教授曰く、意思表示の瑕疵と債務不履行の連続性という観点は国際的にもあるようです。だから、すっぱり切ってしまうこの行政解釈はいかがなものか、と仰ってました。

どっちに転んでも効果が同じならまだいい*2んですが、もし取り返せるお金に差があるようだと嫌ですね。債務不履行の損害賠償と不実告知で取消での不当利得返還、どっちが消費者には得なのだろう。不当利得返還だとこれも行政解釈によれば部屋の差額分(せいぜい1万くらい?)しか取り返せないようなんですが、それだと適当なこといって人集めたほうがツアー会社は得になってしまうんで、全然意味ないですよねえ。「20万全部カエセ」って言えればいいのに。抑止とか考えると・・・って、ここで懲罰的損害賠償を考えてしまいがちですが、日本法はおろかアメリカ法でも契約において認められるわけもなく、不法行為構成にしないといけないですよね。でも、不法行為だとまた変わるのかな?日本は契約でも不法行為でも結局相当因果関係とかいうし・・・


構成によって差があるのかないのか、この手の研究ってどうなっているんでしょう?不法行為債務不履行ならよく耳にしますが、消費者契約法取消での不当利得と債務不履行って・・・。だれか知ってる人がいたら教えてください。消費者契約というところに重点をおくべきかどうかも、そもそも問題となりそうです。
疑問点の適示しかできないところに自分の限界を感じます。最高裁、出たらちょっとは盛り上がると思うんですがねえ・・・。

*1:サイテーションは後日つけます、すみません。ネット探したけどなかなか見つからなくて。プリントアウトしたものはあるんだけど、サイトから落ちてしまったのかもしれない  後記:経済企画庁「逐条解説 消費者契約法」平成12年9月 インターネット版だそうです。

*2:私はそういう解釈はあまり好きではないですが。もしこれで4条1項構成だけで請求を立てたら、裁判所が釈明権行使するんでしょうか、って話なんで。改正行訴法3条、4条の関係を彷彿とさせますが、この件についてはまた後日。