教科書と争点シリーズの魅力再発見

なんか「法学部というより政治学部」な友人たちのブログみてると、K出先生に会いに行けばよかったなあと後悔しつつ。まあ、倒れる前に休むというのが今週からの目標なんで。
それで一念発起したあと何をしていたかというと、のびのびになってしまっている行政法第一部の総括。インプットは終わったのであとはアウトプットしていく作業なんですが、やはり躓きますね。一年前に比べて視野が広くなったことが原因か。
まあ、行政救済法*1の知識が増えたというのは間違いないのですが、色んな発見をしたので書きます。

用語法の問題

実は復習で一番躓いたのが、教科書による用語法・体系がかなり違うこと。わかっているつもりだったのですが、改めて読み返してみるときついです。
たとえば行政規則概念について。この概念、「立法による必要が無い(とされてきた)もの」と「その性質からして法規としての性質を有さないもの」とを内部分類として持つんですが、前者の典型とされてきた行政組織に関する規則・特別権力関係についての規則を「立法による必要が無い」とすることには批判が多い、ということはどの教科書にも書いてありますし、講義においても強調されていました。しかしながら、その状態を踏まえて「行政規則」という言葉をいかに使うかという点においては一致した答えはなく、かなり混乱しました。特に恩師たる講義の先生はその点を踏まえて行政規則という言葉を使わないことを宣言してらっしゃった*2ため、復習時に教科書と付き合わせたときに上記の意図を見落としてなかなか理解できなかったというのが、当時のノートからうかがい知れます(爆)まあ、意図さえつかめば納得のいく話なのですし、単に自分の不勉強がたたっているだけなのですが。
教科書というものは、比較読みすることでこのような問題点に一応対処できるため、やはり複数あった方がいいに決まってます。
ちなみに、上記の「その性質から法規としての性格をもたないもの」というのは私の有している教科書でいかに表現されているかを列挙しますと・・・
塩野先生:行政機関の行動基準(行政法Ⅰ第四版93p)
小早川先生:行政内部規定(行政法(上)101p)
宇賀先生:行政内部規範であるために法規としての性格を有しないもの(行政法概説Ⅰ239p)
*3

争点シリーズの活用法?

有斐閣の別冊ジュリストシリーズでおなじみなのは判例百選でしょうが、増刊として出されている「〜〜法の争点」もなかなか読み応えがあります。私は行政法刑事訴訟法民事訴訟法は持っていますが。行政法の争点 (法律学の争点シリーズ (9))においては編者はしがきに「やや異例であるが、できるだけ多く若い世代の方に書いていただくことを優先した」とあるとおり、昨年の今頃手に取ったときには実は名前を知らない先生の方が多かったのですが、今見ると「あああの人も、ああこの人も」という状態に(爆)ちょっと宝塚パチンコ条例事件について参照しようと思って開いたら、この論者も、この論点も面白い、などと、ついつい読み進めてしまいます。従来は読み飛ばしていたんですがねえ。こんな風に、自分がどれくらい勉強してきたのかがわかってしまうところもちょっと面白かったりして。特に後半は読み飛ばしていたのですが、実は宝の山ですねえ。これでわかった気になるのではダメで、これの参考文献などから色々に調べるのが一番良いのですが、行政法ばかりやっているわけにも行きませんからこれくらいにしましょう(笑)
・・・刑事訴訟法についても同じようなことがいえるようになるくらいに勉強したいところですが(爆)

*1:訴訟法、というべきという分類もありえますが、一応、ここでは救済法という区分でいきます

*2:で、どんな言葉を使ったのかは、まあ同業者が多いこのブログでは書きませんw

*3:ここで「オオハシストを自認しながらなぜ大橋先生の行政法第二版が出てこないのだ」というコメントが出てくることを予測して、補足。大橋先生はそもそも行政規則ということば自体を限局して用いているのではないか、と私は読んでいます。根拠は①上記のような分類のうち、「立法による必要が無いとされてきたもの」についての記述が行政準則論の章にまったく出てこないこと、②上位概念とされる行政立法について、行政「立法」というのは市民・裁判所を拘束しないはずの行政規則を含む概念としては適切ではないとし、「行政基準」ということばを用いている(271p)こと、③行政規則の類型論としてコラム(273p)で紹介しているのはすべて「その性質からして法規としての性格をもたないもの」の分類であることなどがあげられます。