地方自治法と先端科目選択必修化の余波

まずは引用から。

いやまあ自身の学部時代を顧みるに、自治法を勉強したのは行政法の一環としてほんの少しだけ、というのが実態だったので大きなことは言えないけれど、地方自治法は地方行政における基本法であるのみならず国と地方の関係を定める基本法であり、また、国が立案する制度等の多くが実際には地方自治体において実施されることからは、行政に関する仕事をするのであれば、地方自治法の十分な理解が不可欠であると考える次第。
 ローについてはそもそも行政に関する仕事に関心を持つひとが稀少種であろうことからすれば仕方ないにしても、GraSPPの中の人の受講者が少ないのは残念…。(´・ω・`)

branchさんの「続・航海日誌」(10月8日付)http://www.seri.sakura.ne.jp/~branch/diary0610.shtml#1008より。
すっかり希少種認定されてしまった感のあるKaffeepauseですが*1、内部者の立場からこの件についてコメントしてみたいと思い、筆をとりました。



さて、branchさんもGraSPPの中の人も、dpi先生も見落としてらっしゃる件があります。
まずはこちらをご覧ください。

修了に必要な履修要件の追加について【重要】
2006年 3月13日
法曹養成専攻長
法学政治学研究科規則の改正により、2006年 4月 1日から、法科大学院の修了要件として、
下記の要件が新たに追加されます。2006年度以降に在学する学生全員に適用されますので、20
06年度に3年次に進級する学生の皆さんについても、この履修要件を満たす必要があります。
この履修要件の追加は、本法科大学院が受けることを予定している第三者評価機関の評価基準にカ
リキュラムを適合させるために必要となったものです。追加の趣旨を理解の上、2006年度の履修
計画を遺漏なきよう立ててください。
(改正)
法科大学院便覧Appendix 1の法曹養成専攻授業科目表の選択科目の履修要件欄に、以下を追加する。
証券取引法、会社労使関係法、租税と諸法、ビジネスプランニング、金融法、国際取引法、国際租税
法、国際経済法、国際人権法、金融取引課税法、コンピュータ法、刑事政策、少年非行と法、経済刑法、
企業年金法、国際法判例研究及び研究論文並びに選択必修科目欄に掲げられている倒産民事執行法、知
的財産法、国際私法、労働法、租税法及び経済法(以上を、本欄の以下において「展開・先端科目」と
いう。)のうち12単位以上
なお、入学前に国際法をすでに履修した者が国際法の履修に代えて国際租税法、国際経済法又は国際
人権法の履修をする場合においては、国際租税法、国際経済法又は国際人権法の履修により修得する単
位は、修了のために必要な必修科目の単位及び本欄の定める展開・先端科目のうち12単位の双方に算
入することができる。」
(説明)
上記の改正を反映した授業科目表は別添のとおりです。授業科目表では④展開・先端科目として分類
されている科目のうちから12単位以上を修了要件とするものです。
この要件が新たに追加されますが、従来から修了要件とされている英米法総論、倒産民事執行法、知
的財産法、国際私法、労働法、租税法及び経済法のうち4単位以上という要件については変更はありま
せん。倒産民事執行法、知的財産法、国際私法、労働法、租税法及び経済法で修得した単位は、展開・
先端科目のうちから12単位以上という新たな修了要件にも算入することができます。
また、入学前に国際法をすでに履修した者が国際法の履修に代えて国際租税法、国際経済法又は国際
人権法の履修をする場合において、国際租税法、国際経済法又は国際人権法の履修により修得する単位
についても、修了のために必要な必修科目の単位及び展開・先端科目のうち12単位以上という新たな
修了要件の双方に算入することができます。
以上について質問があれば大学院係に相談してください。
なお、便覧本文の変更については、別途掲示いたします。
(以上)

http://www.j.u-tokyo.ac.jp/in/kisoku-1.pdf
より。
つまり、第三者評価機関に突っ込まれたので履修要件を変更しました、ということなのです。
展開・先端科目がいきなり選択必修化したことで租税法の講義が大パニックになったのは記憶に新しいところですが、今学期の倒産民事執行法がなかなか人数爆発気味(でも、二クラスだから何とかなってるみたい)なのも、科目自体の重要性ももちろんのことですが、この要件がからんでいるものと思われます。
(ちなみに、結局どっちも履修していないKaffeepauseが卒業するのに重要な部分は、この選択必修に「研究論文」が含まれているということですね。)


しかし、それだけなら「最先端もお勉強してくださいね」ということなので何も問題ないのですが、これに伴い新たな履修制限がつきました。
・・・なのに、なんぜオンラインでは公開されていないのかがとても不思議なのですが(もし見つけた方がいればご一報ください)、私の手元のメモによると、
掲示されている内容は、
「民事法総合と公法総合は、それぞれ必修となっている単位数+4単位(選択科目として)までしか、卒業単位に編入できない」ということだったと思います。
なぜ、これが導入されたか。
実は、当LSには過重な負担を負わせないための「履修制限」があるのですが、1,2年次は36単位、3年次は44単位を超えては履修できないことになっています(法学政治学研究科規則37条)*2
これに、さまざまな必修・選択必修を組み合わせることによってLSの履修はかなりがちがちになっているのですが、ここで民事法総合・公法総合で単位を稼ぐという手に出ると、先端・展開科目の要件を満たそうとすると全体の履修制限にひっかかる、という懸念がある、というのが当局の説明です。
・・・これにより、
公法訴訟システム(憲法+行政救済法)、財政法、地方自治法、情報法、立法学が含まれる公法総合、
国際民訴、消費者法、現代契約法論、環境法、信託法、社会保障法、裁判外紛争処理法、債権回収法が含まれる民事法総合が影響をうけるわけです。
いづれも2単位科目。)


さて、自分としては、入学当初は以下のような計画でした:
公法訴訟システムは事実上の必修だな。でも地方自治法、やっと取れるようになった*3んだから、地方自治法もとる、と。財政法も、てをだしておきたいなあ。
裁判外紛争処理法も、ADRに興味がずっとあるからとりたいなあ。環境法がなぜ民事法なのかは私理解できないけど、とっておきたいところ。消費者法と社会保障法は、学部でも勉強したけど、さらに理解を深めておきたいなあ・・・


でも、だめなんですよね。どっか削らないと。


地方自治法の履修者が少ない、というのも、実はこのあたりと多少の関係があるのではないかと見ています。
普通のLS生が行政にかんする興味が薄い、となれば、
公法総合は司法試験でも必須な公法訴訟システムで埋めておいて、残りの単位はなるべく民事法総合からとろう、と考えるのが普通だと思うからです。
(自分がチョイスにあげなかった債権回収法、現代契約法論、信託法も大変面白そうですし、国際民訴はここでしか学ぶ機会がないでしょう。)
となれば、地方自治法や財政学に乗り込んでいく人は・・・ましてGraSPPの方と渡り合おう、という人は少ないのではないか、と思います。立法学の教室が先週は満員に近かったようなのですが、それも木曜に成績発表が出たので、公法総合を取ることができた人が次回も月曜1限にやってくるかどうかは私にはわかりません。(講義を聴いていないので、どれくらい面白いかについてもコメントできません)
3年冬開講ではなく、夏開講ならまた事情も違うのかな、とも思うのですが、わかりません。


とりあえず、3年の冬は司法試験の準備、自分は研究論文の追い込みで泣きたくなっているころだと思うので、上記の希望もどこまで通用するかはわかりません。結局どういう選択をしたのかは、来年のこの時期もこの日記が続いていたらお知らせしたいと思います。

こんなところでどうですか、branchさん、id:dpiさん。

*1:こないだの懇親会でもそうだったけどね

*2:ちなみにこれは他学部・他専攻単位にも適用されるうえ、既習入学者はそもそも他学部他専攻単位は卒業単位に編入できないので、自分のように総合法政専攻科目に乗り込んでいくと制限には引っかかるうえ卒業が怪しくなるという状態に陥るので、後輩は注意すること

*3:学部でとりたかったのだが、LSができて繰り上がってしまった。実は去年LSの講義にもぐろうと担当教員にメールを出し、「そんな暇あるんならちゃんと入試勉強しなさい」と怒られたのは私です。