高根町事件の訴えの利益

http://d.hatena.ne.jp/Kaffeepause/20060714/1152887149
昨日の続きです。コメント欄でdpi先生からコメントされていた件につき、長文になるのでエントリをたてました。
さて、当事者訴訟で訴えていたと仮定した場合*1、訴えの利益は認められるのか。
この点につきヒントになるのは、原審(東京高裁H14・10・22 判例時報1806-3)の争点(1)本件別表及び本件内規の無効確認の訴えは適法か否か。についての判断。

ところで、地方公共団体の水道事業に係る水道需用者としては、当該供給規程のうち料金の算定基準を定めないしは変更された部分が憲法及びその他の法令等に抵触するとして争う場合、具体的に発生した個々の水道料金について債務不存在確認を求めるなどして、その訴えの中で約款たる供給規程の効力を争うこともできるが、給水契約という継続的供給契約においては、日々料金債務が発生しているのであるから、個々の水道料金について債務不存在確認を求めることは迂遠であり、より抜本的な紛争解決のためには、約款的性質を有する供給規程自体の無効確認を求めることも許されるものと解される。この場合、供給規程が条例の形式で定められ、その施行によって、その後にされる個別的行政処分を要せず、その内容が給水契約の内容となって水道需用者は義務を課されることになるから、当該条例自体を行政処分性を有するものとして、行政訴訟による無効確認請求の訴えの対象とすることができるというべきである。
 そうすると、控訴人らの訴えのうち本件別表の無効確認請求に係る部分は、行政訴訟による無効確認の訴えとして適法というべきである。
(強調は引用者による)

この原審を受けて、最高裁は処分性を認めなかったのですから、考えられる可能性としては
民事訴訟としての無効確認を認めるということか、それとも当事者訴訟としての無効確認を認めるか、それとも「迂遠な債務不存在」しか認めない(=無効確認の訴えの利益はない)ということか、ということになります。もし民事訴訟での無効確認が適法だったとすると、原審で取り下げてしまったことが悔やまれますが・・・ちょっとこの最高裁の考えていることについて、ぐちゃぐちゃ考えたのですが、結論が出ません。
ただ、債務不存在を迂遠な方法と評価する原審判断からすれば、訴えの利益はあるのではないか、と思ってこのエントリをたちあげたのですが、別の袋小路に嵌まってしまったようです。すみません、中途半端な応答で・・・

*1:ちなみに原告が条例の供給規定について立てていた請求を確認してみると・・・原々審では主位的に民事訴訟での無効確認、予備的に行政訴訟としての無効確認をしていたようだが、民事訴訟部分は原審段階で取り下げ。原々審は民事訴訟として適法な訴えとしたものの請求棄却、原審は行政訴訟として請求認容。さらに、条例施行規則についての内規についても無効確認をもとめていたものの、こちらは原々審、原審、本判決ともに不適法却下です。